VCが投資先において一定事項に対する拒否権(例えば追加増資に反対する権利や、新規ビジネスへの進出に反対する権利)を持ちたい場合、それを実現するには主に2通りの方法があると思います。すなわち、①当該事項を取締役会決議事項とし、かつVCから投資先に取締役を派遣して、その派遣取締役が賛成することを当該取締役会決議の必要条件にする、という方法と、②当該事項を株主総会決議事項にして、VCが保有する株式に当該事項に対するveto(拒否権)を持たせる、という方法です。その2つの方法では何か違いが生じるのでしょうか。
①の場合は、(米国でいえば)取締役としての信認義務があるので、VCから派遣された取締役であっても、投資先の取締役である以上は、まず第一に会社の利益を考えなければなりません。VCとしては反対すべき内容であっても、投資先にとって利益になるものであれば、信認義務を負う取締役としては、取締役会において原則賛成すべきことになります。一方、株主にはそのような信認義務はないので、②の場合は、VCにとって反対すべき内容であれば、投資先の利益云々を考慮することなく、株主総会で堂々と拒否権を行使することができます。支配株主であれば少数株主に配慮すべき義務を負う場合もありますが、通常のVC投資はマイノリティ出資なので、あまり問題になることもないでしょう。
このように、同じ効果を狙っていても、利用するストラクチャーによって微妙に異なる結果をもたらすことがあるので、注意が必要です。