VCと先買権

ベンチャーキャピタルは、スタートアップに投資する際に、投資先株式の先買権(preemptive rights)を投資契約で確保しておくことが多いです。先買権を有する投資家は、次のファイナンス・ラウンドで、他の外部投資家よりも優先してスタートアップに出資する権利を持っています。しかし、実際には、既存投資家だけで次のファイナンス・ラウンドの出資を完結することは少なくて、むしろ外部から新たに投資してくれるVCを探してきて、その外部VCがリード・インベスターを務めることが多いです。

なぜ、そのようなことをするのでしょうか。もちろん、必要な金額を調達するために新たなVCが必要だった、ということも多いと思いますが、ちょっと違って視点で見てみたいと思います。 “VCと先買権” の続きを読む

コンプライアンス・オフィサー受難の時代?

WSJによると、金融機関のコンプライアンス・オフィサー個人が行政処分において制裁金を課される事例が増えており、ニューヨーク州では、州の規制当局がコンプラアンス・オフィサーの刑事責任を追及する動きも出てきているとのことです。このような中、コンプライアンス・オフィサーの職を敬遠する人が増えており、新たな候補者を見つけるのが大変になってきていると。

ファンドのポートフォリオ・マネジャーが個人的な投資において利益相反行為を行っていたことを意図的に見逃したとして、ファンドのコンプライアンス・オフィサーが6万ドルの制裁金を課された事例も紹介されています。具体的にはこちらですね。

培養肉スタートアップ

Wall Street Journalに、「培養肉」に取り組むスタートアップが増えている、という記事が出てました。培養肉とは、動物の細胞を培養して人工的に作られた食用肉であり、効率的に肉が製造できます。数年前から牛肉で取り組まれているようですが、その後鳥肉が続き、今回は豚肉の培養にも取り組むスタートアップが現れたという記事です。肉の消費は世界的に増え続ける一方、既存の畜産業は規模の拡大に限界があるので、技術革新が必要な市場ということでVCのお金も流れ始めています。

酸素供給が必要なので極薄の肉しか作れないとか、培養過程で牛の胎児の血清が必要なので結局は製造のプロセスから動物が排除されていないとか、今の時点ではコスト面以外にもいろいろ課題はあるようですが、面白い分野ですね。

 

在シリコンバレーの日系VC一覧

ふと思い立ちまして、シリコンバレーでご活躍されている日系のベンチャーキャピタルのリストを作ってみました。ありそうでないように思いましたので。シリコンバレーに拠点があって、日本人ベンチャーキャピタリストが活躍しているVC、という観点でリストを作りました。 “在シリコンバレーの日系VC一覧” の続きを読む

米国のFintech

Wall Street Journalが、Has Fintech Boom Peaked?(フィンテックブームのピークは過ぎた?)というタイトルの記事を出しています。内容としては、上場したFintech企業の株価が下がっていること、Fintech企業のIPO延期が立て続けに発表されたこと、Fintech企業の案件数が昨年は2009年以来はじめて年間案件数として減少したこと、などが挙げられています。 “米国のFintech” の続きを読む

シード期のバリュエーションの変化(とついでにcrowdfundingについて)

ユニコーンの評価額の反転についての話題を目にすることが多いですが、アーリーステージのスタートアップについても、評価額が下がりはじめているという話もあるようです。Wall Street Journalによれば、AngelListという、エンジェル投資家向けのクラウドファンディングサイトで資金調達したスタートアップのバリュエーションの平均額は、ここ数年上昇していたところ、2015年の第4四半期は490万ドルから420万ドルに下がってしまったということのようです。 “シード期のバリュエーションの変化(とついでにcrowdfundingについて)” の続きを読む

乱調なLBO市場のPE案件への影響

PEファンドによる企業買収は、リターンを上げるためにローンや債券発行で債務性の資金を調達し、ファンド自らの資金にレバレッジをかけるのが通常ですが、レバレッジをかけるデット・ファイナンスの引き受け手が市場から消滅しつつあるため、必要な買収資金を調達できず、数千億円単位の巨額のディールが何件もクローズできなくなる可能性が高まっている、という記事がFinancial Timesに出ています。 “乱調なLBO市場のPE案件への影響” の続きを読む