ジョン・ドーア引退

Kleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)のJohn DoerrがKCPBの会長に就任して、投資業務の第一線からは身を退くようです(WSJ)。

クライナー・パーキンスといえばシリコンバレーに永らく君臨してきたVCです。近年は女性差別問題の訴訟が話題になり、またそれ以前にはクリーンテックへのシフトが結果的に上手くいかなかったりして、かつてほどの絶対性は失われてきていたようですが、それでもレピュテーションが最も重要な財産であるVC業界において、依然として名声を保ってきたように思います。それを引っ張ってきたJohn Doerrが一線から退くというのは、一つの時代の節目なのでしょう。

シリコンバレーの就職人気の変化

シリコンバレーのエンジニアの間で、アップサイドの大きい(いわゆる本当の)スタートアップへの就職人気が落ちており、Googleなどのより「安定的」な会社の人気が高まっているという記事が、Wall Street Journalに出ていました。

ここ最近の投資マインドの冷え込みにより、スタートアップの先行きが不透明になったことを受けての対応です。ランチなどの福利厚生が充実していることは優良スタートアップの大いなるアピールポイントだったわけですが、最近では、豪華な福利厚生を提供するスタートアップを、「金を無駄遣いしている」と見て逆に避けるエンジニアも出てきているとのことです。

とはいえ、このように一般大衆がある方向に動いたときに、世の中の流れに逆行する動きをすることこそが、リスク対比のリターンを高める秘訣です。例えば、(英語がさほど得意でない)日本人がシリコンバレーのスタートアップに挑戦したいのであれば、今のような時期こそがチャンスなのでしょう。

ユニコーンの評価額推移

ユニコーンに投資するミューチュアル・ファンドは、その投資先であるユニコーンの株式をいくらで評価しているのか、四半期ごとに開示しています。その評価額の推移を一覧化することを、Wall Street Journalが始めたようです(The Startup Stock Tracker)。

ミューチュアル・ファンドは、一般大衆から運用資金を預かっているので、このような開示義務があるところが、VCとは大きく異なるところです。

SECがファンドに対して目を光らせている分野

世界的な趨勢として、ファンドに対する規制は年々厳しくなっています。その流れの一環として、米国のSECではここ数年、ファンドに対する検査を強化し、不適切な行為に対して行政処分(enforcement)を課する方針を強めているようです。

SECがファンド検査の重点項目としている分野は、SECのサイトで毎年(2013年以降)公表されているのですが、その中でも繰り返し掲げられているのが、ファンドのフィーや経費に関わる内容であり、実際の処分も数多く出されています。 “SECがファンドに対して目を光らせている分野” の続きを読む

インドのスタートアップ

Wall Street Journalに、海外で経験を積んだインド人が、続々とインドに帰って起業をはじめている、という記事がありました。インドのスタートアップの数は、2010年から2015年の間に3倍になったそうです。

インド人は理系的な才能に富んだ人が多く、シリコンバレーでも多数のインド人が活躍しており、スタートアップが活躍する土壌は結構前からあったと思います。まさに今が伸び盛りということなのでしょう(といっても、既にユニコーンはいくつもインドに存在するわけですが。)。人口からしてマーケット規模も十分なので、VCの投資対象としてなかなか魅力的な地域です。ただ、Wall Street Journalのような大きなメディアが報道しているということは、投資の最適なタイミングは既に過ぎてしまったということかもしれません。早すぎても駄目だし、遅すぎても駄目というのが、投資の難しいところです。

ファンドLPのための業界団体

ILPA(Institutional Limited Partners Association)という、PEファンドの投資家(LP)の利益を推進することを目的とする団体が、PE業界で用いるべきベスト・プラクティス・ツールを色々公開しています。総額1兆ドル以上を運用する300以上の投資家がILPAのメンバーになっているとのこと。

ILPAでは、ファンド情報の透明化を図るため、ファンド・パフォーマンスやフィー情報(キャリード・インタレストや管理報酬)などの統一的な開示基準を提示しているほか、キャピタル・コール通知書のサンプルや(ファンド出資の際の)DD質問状のフォーマットなど多少マニアックな資料もサイトで公開しており、参考になります。この団体のものであるかどうかは別として、ファンド業界における開示の様式は長期的に見れば標準化されていくのでしょう。

誰がIoTに投資しているか

少し前のものですが、IoTに投資しているVC上位14社と、その投資先を一覧化したが公開されていました。勉強になります。

Intel Capitalがダントツの1位、Qualcomm Venturesが2位です。確かにこれらの企業はチップメーカーとして、PC、スマホの次に来る覇権争いに負けないよう、この分野に投資する意味がありそうですね。CVCとしては他にCisco Investmentsが入っています。Ciscoもネットワーク機器のガリバーなので、IoTで取り組める内容が多そうです。

FacebookはなぜIPOする必要があったのか

Financial Timesに、最近ユニコーンのIPOが進んでいない、という記事がありました。その内容はさておき、記事の中に、株主数が一定数を超えるとスタートアップは上場せざるを得なかった、という記載があったので、その根拠となる規制の具体的な内容について、備忘的に記します。 “FacebookはなぜIPOする必要があったのか” の続きを読む

Googleの制限付き株式って?

GoogleのCEOが報酬として約230億円相当の制限付き株式を付与された、という記事がブルームバーグに出ています。

制限付き株式(Restricted Stock)というと譲渡制限株式かな、というイメージが日本だとありますが、ちょっと違いますよね。Google(というかAlphabet)は上場してますしね。 “Googleの制限付き株式って?” の続きを読む

上場PE会社の株価

フィナンシャルタイムズで、上場しているPE会社の株価が低迷しているという記事が出ています。発表されつつある2015年第4四半期の業績が振るわないということが触れられていますが、収益構造的にどうしても業績の変動は激しくならざるを得ないので、株式市場で評価するのは難しい業界ですね。